ひげの感想文

日々感じたことを、想いのままに連ねていきます。音楽とか映画とか、もっとくだらないこととか、色々。

2018年ベストアルバム

2018年は、それはそれは大きな出来事がありました。トイレで用を足したあとに、ジェットタオルで手を乾かすことが自分は想像以上に好きだと気がついたことです。ウソです。2月に娘が誕生したことです。はや10ヶ月で元気につかまり立ちなんて始めちゃって。今のところ大きな病気をすることもなく(ここ数日は吐いたり下痢したり大変でしたが。奥さんとあちらの実家に大変お世話になりました。)、それが何より良かったなと。

そんな大きな環境の変化もあり、音楽を聴く時間は物理的に減りました。けれど、変わらず好きです、音楽。家で聴く時間もライブに行く時間も減ったからこそ、音楽をより尊く思えたような気がします。そんな訳で以下に今年良かった10枚を書いていきます。

 

10.Ady Suleiman「Memories」

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Twitterで良質な音楽(ほぼ洋楽)をひたすら紹介してるアカウントがあって、今年かなりお世話になったわけですが、その中でも個人的にヒットした1枚。チャンスザラッパーも絶賛してるというUKソウルシンガーのデビュー作。レゲエやジャズなど色んなルーツを感じさせながら、とにかく歌が気持ち良い。日曜日の午後に大音量で流してたらゴキゲン間違いなしなやつです。

 

9.アナログフィッシュ「Still Life」

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近年のアナログフィッシュの表現の研ぎ澄まされ方っていうのはちょっと凄みを感じるレベルで。「荒野/On the Wild Side」「NEWCLEAR」とはまた違う次元だけれど、彼らにしかできないことをやってると思います。ミニマルで隙間のある音作りだけど、決して薄くならず、聴き応え抜群。アナログフィッシュが日本のインディシーンにいてくれることでいくらか安心できる部分もあります。決して大袈裟ではなく。

 

8.Tom Misch「Geography」

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ロンドンを拠点に活動する弱冠23歳(!)のSSW/プロデューサー、トム・ミッシュのデビューアルバム。サブスクなりYouTubeで過去の膨大なカタログにどんどんアクセスして、色んなものをサンプリングしながらオリジナリティのある音楽を創る。 そういうことが感じられる、ものすごく現代っぽいアルバムです。けど宅録感MAXみたいなわけでもなくて、演奏してる姿が見えるのも良い。NulbarichとかSuchmosが好きな人は絶対に聴いて損しないと思います。

 

7.スーパーノア「素晴らしい時間」

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京都のインディロックバンド、スーパーノアの3rdミニアルバム。10枚中、唯一のミニアルバムでの選出。そのくらい素晴らしかった。今年9月に人生で初めて音楽ライター講座(岡村詩野さんのやつ)というものに参加しまして。大変に刺激を受けたんですが、宿題で新曲1曲の500字レビューを書いてくるというのがあり、衝撃を受けたこのアルバムの1曲目「ミラーボール」について書いていったのでした。それが↓

 

「現代はインスタントなものが求められる時代だ。情報量が多く人はみな忙しそうに生きており、時間がなくて分かりやすいものを求めがちになる。音楽もいわゆる「効きの速さ」が求められる中で、およそ8分弱にもおよぶこの曲は、一見時代に逆行しているともとれる。ただよーく耳を凝らして向き合ってみると、非常に聴きどころが多い曲だと分かる。ゆったりとしたイントロから始まり徐々に展開するリズムの多様さ、叙情的な歌唱、様々な楽器の組み合わせで音色を変えながら曲中何度も繰り返される印象的なフレーズ、サイケデリックにかき鳴らされるギター・うねるベース・手数が多いながらも非常に均整のとれたテクニカルなドラムが一つの塊となって大団円に向かって行く壮大なアウトロ。8分間があっという間に過ぎ去る。聴き終えたあとには、音楽に無条件で心踊らされた10代を思い出す「音楽ってこういうものだったな」というある種の懐かしさと、世の音楽に対して真摯であれと願う「音楽にこうあってほしい」というような、二つの感情が同時に込み上げてくる。

この曲は、音楽に向き合ってじっくりと楽しむことで、誰もが「素晴らしい時間」を過ごせることを証明している。」

 

自分が知らないだけで、まだまだ世の中には良いバンドがいっぱいいるなと思い知らされました。

 

6.ROTH BART BARON 「HEX」

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もうとにかく早く世界でとんでもない売れ方をしてくれって感じです。フジロックのグリーンで演奏してる姿が想像できるスケール感を持ったボーダーレスな音でありながら、メロディしか追いかけないようなJ-POPだけを聴く層にもダイレクトアタックを仕掛けられます。曲や演奏やアレンジが良いのは当然ながら、「歌」の強さが段違い。歌がちゃんと強いことが、ROTH BART BARONが世界で勝負できると自分が思う理由だったりする。12月に渋谷WWWで観たワンマンも本当に本当に素晴らしかった。この人たちの音楽が大衆に発見されない国に住んでいたくないし、ましてやそんな国の音楽シーンは腐っていくだけ。そう言い切ります。

 

5.くるり「ソングライン」

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これ、くるりにとって実は初めてのタイプの、ただただ「良い歌・曲」が並んでいるアルバムだと思いました。というとちょっと味気なく思われがちですが、「THE PIER」を経たからこそ出来たであろう、その「良い歌・曲」のレベルがとんでもなく高い1枚。「THE PIER」があれだけ音楽的に複雑な一大音楽絵巻だったことを考えると、その揺り戻しみたいなところもあるのかなと思いつつ、そんな単純な話でもないような気もします。くるりはいつだって時代の2〜3歩先をいってるバンドで、このアルバムもなにかを暗示してたってことがもう少し先の未来に分かってくるんだと思います。

 

4.cero 「POLY LIFE MULTI SOUL」

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ものすごく形容しがたいアルバムというか、「〇〇っぽい」というのがいまだに見つかりません。「Obscure Ride」を経てどこに行くのかなと眺めていたら、その自分が眺めていた方向には全く彼らはいなくて、「え!?どこをどう通ってそこにたどり着いたの!?」って感覚。それでいて全くポップさを損なわないし、ダンスミュージックとしても成立してるし、バンドとして日本の宝でしょう。フェスにceroがラインナップされてるだけで安心感がすごいもんね。自由に、どこまででもいってくれればと思います。

 

3.Mr.Children「重力と呼吸」

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心から敬愛するMr.Childrenの、3年4ヶ月ぶりのアルバム。これについては先日書いた記事を参照してください。↓

http://hige1989.hatenablog.com/entry/2018/10/13/231056

ただやっぱり今改めて思うのは、「渇いている」なと。ミスチルの表現というのは桜井さんのボーカルも相まって一般的には「湿った」見られ方をすることが多いと思うんだけど、「渇き」がここまで全編に出てるアルバムはこれまでになかったと思います。全く心配はしてなかったですが、まだまだミスチルは第一線で闘えるんだと安心させられ、また次が楽しみになる作品でした。

 

2.星野源「POP VIRUS」

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STUTSの数曲への参加だったり、河村カースケ智康や玉田豊夢を曲ごとに使い分けてたり、現行のUS・UKシーンに接近してビート・リズムにこだわったことは明らかながら、J-POPであることも絶対に諦めないという、1人で空中ブランコをしてるみたいな離れ業をやってのけた作品。

星野源の表現には「SUN」や「恋」のような楽しい曲であってもどこかしらに「哀しさ」が必ず含まれていて、例えばイチローだったり松本人志だったり、各分野の超一流の人物の表現にも必ずそれがあるように、頂点に行くためにもはやそれは不可欠なんだと思う。正直何周かしたあとに「思ったより暗いな」とか、「YELLOW DANCERの方が良かったかな?」って思ってしまったのも事実だけど、何周も何周もしてるうちにその「哀しさ」だったり「怒り」が、このアルバムを名作たらしめる要素なんだと気がつきました。オーラス「Hello Song」がとにかくとんでもない名曲で、大袈裟に言うとそれまでがこの曲のための前フリだったんじゃ?っていうくらいのバケモノっぷり。お茶の間レベルのポップスターとしての責任も、業も、全てを引き受ける覚悟が見えました。星野源は本当の意味で、地位を不動のものにしたと思います。年末年始に何か1枚お年玉でアルバム買おうっていう中高生には迷わずこれを薦めたい。

 

1.ASIAN KUNG-FU GENERATION「ホームタウン」

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堂々の第1位。やっぱりロックバンドが闘うのがどんどん難しくなってる時代で、音楽的にすごく新しいかと言われるとそうではないこのアルバムが1位である意味は本当に大きいです。

ゴッチも様々なインタビューで語っている通り、海外でメインストリームになっているヒップホップやソウル/R&Bに特徴的な空気を震わせるような重低音に対して、ロックバンドは何ができるのかを徹底的に追記した音の強度がハンパじゃない。もはや低音の細かい機微は自分には聴き取れないけど、やっぱり低音(リズム隊)がしっかり下にあることで、ギターだったり歌がしっかり前に出てきてて、立体感のあるサウンドに仕上がってます。

数曲をWeezerのリバース・クオモが提供してたり(その曲がめちゃくちゃ良い!)、これだけのキャリアを持つバンドがガチガチにならずに柔軟にやってる姿勢含め本当に素晴らしいですね。「みんなが聴きたかったアジカン」を覚悟を持って引き受けて、でも自分たちのやりたいことも決してないがしろにせず、未来につなげていく。ゴッチ風に言うとめちゃくちゃ「ヘルシー」なアルバムだと思いました。(サバンナ八木を思い出させましたね。すみません。)

「はじまったばかり We’ve got nothing 」と歌ってくれる彼らに、このアルバムに、大いなる希望を感じさせてもらいました。ありがとうアジカン!!ロックンロールイズノットデッド!!!!!!!!

 

 

次点でKID FRESINO、踊ってばかりの国、TENDRE、降谷建志、THE INTERNET、NONAMEあたりが良かったかな。

主に政治とか、色々ムカつくことは本当に多いけど、今年も何やかんや音楽は楽しかった。2019年も楽しみます。それではみなさま良いお年を!!